「ナランチャ・ギルガ」という名前について

イタリアのオタクとしての「ナランチャ」「ギルガ」の姓名調べ学習と、名前についての私の解釈・与太話です。
わりとがんばったと思うのですが、ぜんぜん調べきれてません。(情報を手に入れる力が)貧弱!貧弱ゥ!


1.ナランチャ/Narancia について

Arancia(アランチャ)が果物のオレンジだということは有名でしょう。ではNはどこから……?
「Narancia」はイタリアの古語である、という話も聞くのですが、ソースが見つけられません。

そもそも現代イタリア語の「アランチャ」という言葉、というか英語の「オレンジ」もそうですが、語源がドラヴィダ語の「ナル」にあるようなんですよね。イタリア語とかなり似たスペイン語も語源は同じで(直ではないですが)、「ナランハ」とかなりナランチャと似ています。

オレンジそのものは16世紀にポルトガルによって輸入されたようなんですが、シルクロードを通って1世紀のシチリアで既に「Melarancia(メラランチャ)」とい呼ばれる柑橘が栽培されていた、という話もあります。わからん。

方言説もありますが、ヴェネツィア方言で「Naransa(ナランサ)」フリウリ語では「Narant(ナラント)」など、まんま「ナランチャ」は見つからず。


あと考えられる可能性としては(かなりこじつけ感がありますが)、現代イタリア語で不定冠詞、「ひとつの」を意味するUna(ウナ、トリッシュの姓と同じですね)をつけると、被っているAが吸収合併されてUn'arancia(ウナランチャ)になります。
もちろん不定冠詞をつけるというのは頻繁に行われることなので、荒木先生がイタリア語会話や文章を見る中でUを落とした「Narancia」のみを拾った可能性もなくはないかな、などと思います。イタリア語の発音は比較的日本人にも聞き取りやすいですし、あまり無い気はしますが……。


実在する言葉なのか、先生はどういうルートでこの名前をつけることになったのか、本当めちゃめちゃに気になる…………


2.ギルガ/Ghirga について

珍しい姓のようで、Wikipediaの「イタリアの姓」のページには日本語ページ・イタリア語ページどちらにも載っていません。
ですがイタリアの姓を集めたサイト3つほどに載っており、はっきり本名であろうと断定のできる方も見つけることができました、小児科医のジョヴァンニ・ギルガさんです。

検索設定を全ての言語にしても余裕でジョジョ関連のページが出てくる中でよくぞ……!


ただ本当に由来が分からないんですよね。イタリア語で「由来」「語源」などを入れて調べてみたし、伊和辞典もひいたのですが、全く記載がない。活用の可能性も考えて最後の母音を変えて確認もしましたがそれでもない。
オタクとして言葉の意味を知っておきたいんですがね……
というか「ナランチャ」と良い、よくこの珍しい言葉に辿り着いたな荒木先生!?


3.母親の名前について

ナランチャの父親の名前は出ていませんが、母親の名前はアニメで描写されましたね。
Mela Ghirga(メーラ ギルガ)と墓標に刻まれていました。
(メディアミックスそれぞれで世界線が違うと思っていますが、原作での描写は全くないのでアニメの話をします)
Melaは「りんご」という意味なのでそれで息子に「オレンジ」と名付けたなら微笑ましいですね。ただMelaもNaranciaも一般的な人名か?と言えばかなり怪しいですし(イタリアは基本の名前の型があってそこから選ぶような形が一般的です)、とくにナランチャは後述する内容と相まってだいぶキラキラネームっぽくもありますが。



そしてここからがこの段落の本題、大事なところです。



イタリアでは基本的に夫婦別姓で、子供は父親の姓になるんです。



細かく言うと1975年から実質的に夫婦別姓(いちおう妻が夫の姓を名乗ることもできる)になりました。また、子供の姓については2016年に「必ず父親の名字が与えられる規制は違法」と裁判所が判断しています。


つまり1983年生まれのナランチャは、両親が別姓で戸籍の上では父親の姓がついている可能性が十分あるのです。

本当の姓は父親と同じなので名乗っておらず、母親の姓で通している、という解釈ができるのです。


そう考えるとめちゃめちゃ面白くないですか?面白いです。
ブチャラティや他の仲間はそのことを知っているのかなとか、いつ母親の姓を名乗るようになったんだろうとか(タイミングによっては悪ガキ仲間や少年院時代の人生との決別になるかもしれないですね)、公的な身分証明書はどうなるんだろうとか……。想像が膨らみますね。


言ってしまうとアニメスタッフはそんなこと考えてないだろうとは思うのですが、大事なのは物語でどういった描写がされていてどう解釈できるかです。ボスも「この世には結果だけが残る」と言ってますし……(ボスのセリフを都合よく使うな)


4.言葉の「性」

さて、言葉に「性」がある外国語って、わりとありますよね。イタリア語もそうで、(例外はありますが)単数形で母音「A」で終わる言葉は女性名詞、「O」で終わる言葉は男性名詞、「E」は言葉によりまちまちです。

そう、「Narancia」はA終わりなので女性名詞なんです。世界に1000億人はいるであろう、ナランチャを女の子だと勘違いした人も納得!(私も昔5部を読んだとき、それまでの部をほとんど読んでいなかったこともあって見た目から「男勝りな女の子かな?この作者って女の子も筋肉質に描くんだなァ」と思って読んでました)(そのときイタリア語の法則は別に知らなかった)

ちなみに姓だと性は関係がなく(ややこしいね)、他のキャラクターで名前の性と本人の性が一致していない人は、パンナコッタ(Panna cotta)、カルネ(Carne)、チョコラータ(Cioccolata)。ルカはラテン語のルカス(Lucas)やルキウス(Lucius)に由来する男性名です。(ちなみにパンナコッタもだいぶ面白いなと思うのですがここでは置いておきます)

というわけで、あくまで私の推測ですが、日本人だったらみかんという名前がついてる男の子、くらいのキラキラ感ではないか?と思います(果物のオレンジとみかんは少し違いますが)。



参考にしたページ(一部)


アランチャ、オレンジの語源


アランチャの語源、方言


イタリアの夫婦別姓の歴史


イタリアの子供の姓